特別プログラム
エターナルブリッジ代表・野村直史氏 インタビュー
子どもと真正面から向き合う教育を、もう一度つくりたかった
“子どもをどれだけ知れるか”がすべての始まり
――まず、これまでのご経歴から教えてください。
大学卒業後、大手個別指導塾に入社し、教室長として現場に立っていました。
入社して3ヶ月で新規教室の立ち上げを任され、半年ほどでいくつかの賞をいただき、自教室の運営以外に4教室をマネジメントする地域責任者に抜擢されました。
ただ、これは自分の実力ではなかったと、今は冷静に思っています。
会社として変革期にあり、象徴的な若いリーダー、つまり「飾り」が必要だったこと。
そして何より、未熟な私の可能性を信じて引き上げてくれた上司や、必死に応えてくれた現場の仲間がいたからこその結果でした。
当時は自分で授業を多く持っていたわけではありません。その分、生徒たちの「頑張りのサイン」を見逃さないようにしていました。
授業中の表情や、手が止まる瞬間。そういう細かい部分を見て、講師と「今、あの子はどこで迷っているのか」を徹底的に話し合いました。
――かなり現場に入り込んでいたのですね。
そうですね。講師と同じか、それ以上に子どもの今を知っていないと、本当の意味で子どもたちを変えることはできないと思っていましたし、何より講師と信頼関係は築けない。
当時は、講師ともかなり熱くやり合っていました(笑)。でも、それは全部「この生徒がどうやって成功体験を積めるか」のため。私に付き合ってくれた当時の講師たちには、今でも感謝しています。
気づけば、子どもたちの輪が広がっていた
子どもたちが「あそこなら頑張れる」と伝えてくれたのか、気づけば紹介がどんどん増えていきました。
開校1年で150名、2年目には250名近くになり、教室に生徒が入りきれなくなって移転することになりました。
――異例の成長ですが、野村さんの中ではどう捉えていましたか?
「生徒を増やした」という感覚は全くありませんでした。目の前の子どもたちが自分たちの壁を乗り越えようとする姿に向き合っていたら、結果としてその輪が広がっていた、という感覚です。主役はあくまで、頑張っていた子どもたちでした。
――紹介がそこまで増えた理由はどこにあったと思いますか。
やっぱり、どこまで一人ひとりに向き合えていたか、だと思います。
私の教室の講師は授業だけで終わらせずに、どこで止まっているのか、どう考えているのか、そこまで見ていた。
直接関係しているかはわかりませんが、学校公開日には実際に近隣の中学校に足を運んで、授業の様子を見ることもありました。
――学校での様子も確認されていたのですね。
はい。単純に気になっていたんです。子供たちが学校でどういう顔をしているのか。
実際に見てみると、塾とは全然違う表情をしていたりして、そこから分かることも多かったです。
気がつけば、クラスの半分以上が自分の生徒だった、ということもありました。そのときはさすがに少し驚きました。
結果として保護者の方と顔を合わせる機会も増えて、その繋がりで学習相談を受けることもありました。そういった積み重ねが、紹介につながっていったのだと思います。
若くして直面した“自分の未熟さ”
――その後、マネジメント側に回られてからは、苦しい時期もあったそうですね。
はい。地域責任者1年目は、ほとんど成果を出せませんでした。経営会議でも一番経験がなく、役員の中には、私の降格を考えていた方も多かったはずです。
ただ、その中でも一つだけ、私を支えてくれたものがありました。自教室を持ちながらのマネジメントでしたが、その自分の教室だけは、首都圏150教室の中でもトップクラスの成果を維持していたんです。
でも、それは私の力ではありません。私が不在がちな中、講師たちとアシスタントが「生徒のために」と必死に教室を守ってくれていた。私はそれまで教室を支えていると思っていました。でも実際は、私は彼らに支えられていたんです。
“管理”ではなく、一人ひとりに“向き合う”
そのときに気づいたんです。教室長のときは講師に対してやっていた「寄り添い」を、自分は他の教室長や社員たちに対してできていたのか、と。
どこかで「管理する側」の顔になってしまっていた。そこに気づいてからは、教室長一人ひとりと向き合うように変えました。それからは自然と、各教室で良い循環が生まれ、マネジメントする規模も年々増え14教室まで増えていきました。
ただ、立場が上がるほど、子どもと直接向き合う時間が減っていくことに、どうしても違和感が残りました。
「このままでいいのか」という問い
――順調なキャリアに見えますが、独立を考えた背景には何があったのでしょうか。
教室長時代、私は子どもと話す時間、講師が悩みながらも成長していく姿を見ることが本当に好きでした。それが一番のやりがいだったんです。
ただ、役割が広がるにつれて、本社での経営会議やブロック内での会議、採用面接や社員研修に時間を取られるようになりました。必要な仕事ではあるんですが、気づけば子どもや講師と向き合う時間がほとんどなくなっていた。
そのときに、「自分はこのままでいいのか」という感覚が残ったんです。
一度立ち止まり、選び直した
――そこから宿泊事業へ進まれたのは、少し意外にも感じます。
そうですね。よく言われます。
ただ、自分の中では飛んだ感覚はなくて、一度立ち止まって選び直した、という感覚に近いです。
大学生のときに書いた就職活動ノートの中のキャリアデザインを見返したときに、「一人ひとりに直接関わって笑顔にしたい」ということと、「笑いが絶えない宿泊施設をつくる」ということが書いてあったんです。
それが、自分の原点のように感じました。
現場に戻ったことで見えたもの
――実際にやってみて、どうでしたか。
最初は大変でした。ただ、その時間があったからこそ、「自分はどういう形で人と関わりたいのか」を改めて考えることができました。
また宿泊事業の経営と並行して、地元の中学校でボランティアとして数学を教えるようにもなりました。
――ボランティアで、ですか。
はい。報酬はいただいていません。
純粋に、現場で子どもと向き合いたいという思いでした。
組織の中では見えなくなっていたものが、そこでまた見えるようになった気がします。
すべてがつながった瞬間
そのあとに、長くお付き合いのある保護者の方から「短期間で集中できる場所はありませんか」と言われたときに、すべてがつながった感覚がありました。
――宿泊個別指導は、エターナルブリッジの象徴的なサービスですね。
はい。1泊2日で16時間というのは、通常の家庭教師や塾で言えば、およそ2か月分にあたる濃さです。
宿泊個別指導の本質は、ただ長く勉強することではありません。子どもがどこでつまずくのか、どういう思考の癖があるのか、努力しているのに成果が出ない原因は何かを、短期間で徹底的に把握し、その子に合った“勉強のやり方”をつかませることです。
サイトにも「本気で向き合えば、人は変わる」とありますが、まさにその通りで、16時間本気で向き合うと、子どもは本当に変わります。帰る頃には、私も子どもも正直ヘトヘトです。でも、その2日間で顔つきが変わるんです。「やればできるかもしれない」という感覚を持って帰れる。その最初の成功体験が、その後の伸びを決めます。
宿泊個別指導を支える設計思想
――宿泊個別指導を、比較的手の届きやすい価格で出されている理由もありますか。
大きく2つあります。
1つは、自社で宿泊施設を運営しているからです。外部の施設を借りるのではなく、自分たちの場所で行うことで、余計なコストを抑えています。
もう1つは、この宿泊型を、単体のイベントではなく、家庭教師指導の前に受けることで学習効果を最大化する導入プログラムと位置づけているからです。
ここで私自身が、その子の性格、思考の癖、生活リズム、学習状況を直接把握し、その後の学習の流れを設計する。これがあるかどうかで、家庭教師の精度は大きく変わります。
つまり、単なる合宿ではなく、その後の教育の質を高めるための基盤投資なんです。
――その“設計”という言葉が、エターナルブリッジの特徴ですね。
そうですね。サイトにも「教務スタッフがすべての授業を確認し、講師への指導や改善も行う」「教務室が設計し、家庭教師が実行する」とありますが、ここは非常に大切にしている部分です。
エターナルブリッジは、家庭教師任せのサービスではありません。目的に合わせて教務室が設計し、講師はその設計に沿って授業を実行する。だから、どの先生に当たっても一定水準の質を担保しやすい。これが他社との大きな違いです。
――その設計の中核にあるのが、EBメソッドでしょうか。
はい。EBメソッドの核は、自己理解と再現性です。
サイトにもある通り、私たちは点数だけを追いかけているわけではありません。「努力すれば結果は変えられる」という実感を育てることを重視しています。
そのために必要なのが、独自の誤答分析と反復練習です。中学生コースの説明でも、誤答分析、理解のズレの把握、教務室と講師の連携が打ち出されていますが、これは単なるテクニックではなく、その子自身が「自分はなぜ間違えるのか」を理解するための方法なんです。
速さと正答率で変化を可視化し、誤答から思考の癖を分析し、生活習慣まで含めて整える。すると、点数が上がるだけではなく、自分で学べる力が育っていきます。
エターナルブリッジが目指しているのは、「最終的に塾に頼らない学習力」です。
生活サポート型プログラムというもう一つの答え
――もう一つの特別プログラム、生活サポート型プログラムも非常に独自性があります。
これは私は、現代の家庭における教育の最適解の一つだと思っています。
共働きやシングル家庭では、子どもの勉強を見たい気持ちがあっても、時間的にも体力的にも難しい。
しかも、中学受験や学校学習の内容はどんどん高度になっていて、保護者が教えたくても教えられないケースも多い。
そこで、サイトにあるように、夕方4〜5時間、授業・食事・翌日の準備・片付け、必要に応じた送迎まで一貫して支える生活サポート型プログラムを用意しました。
担当は指導経験のある20〜50代の女性講師が中心で、希望があればスマホで様子を確認できるライブ配信にも対応しています。
勉強だけを見るのではなく、生活リズムと学習習慣を一緒に整えるから、結果として集中力も成果も上がりやすい。
これは今の時代に、非常に必要なサービスだと考えています。
宿泊と日常、その両方で支える設計
――宿泊個別指導と生活サポート型プログラムは、どういう関係にあるのでしょうか。
この2つは、同じものではありません。
宿泊個別指導は、短期間で土台を作る“導入プログラム”。
生活サポート型は、日常の中で支える“継続プログラム”。
そして、その先に家庭教師指導がある。
つまり、エターナルブリッジは、入口が複数あっても、最終的には一貫した学習設計の中に収まるように作られています。
商品を増やしたいのではなく、子どもに必要な入り口を用意したいだけなんです。
教育の理想と家庭の現実、その両立
――この事業全体を、どのような思想で作っているのですか。
私はよく、エターナルブリッジはプロダクトアウトであり、マーケットインでもあるとお話ししています。
プロダクトアウトというのは、現場で長年見てきた中で「これが本当に成果を出す教育だ」と考え抜いたものを形にしているということです。
EBメソッドや教務室主導の設計は、まさにそこから生まれています。
一方で、マーケットインでもあります。現代の家庭が抱える、勉強を見る時間がない、生活が乱れやすい、塾に通っても伸びない、といった現実の課題に応えた結果、宿泊個別指導や生活サポート型が必要になった。
理念だけでもだめですし、ニーズだけ追ってもだめです。
教育の理想と、家庭の現実。その両方を見ているのが、エターナルブリッジです。
最後に
――最後に、野村代表ご自身の原動力を教えてください。
単純に、目の前の人のことを深く知りたいんです。
管理者として仕組みを回すだけではなく、現場で人に本気で向き合うのが好きなんです。
その一方で、このやり方をもっと広げたいとも思っています。
現場に立つ教育者としての自分と、それを広げる経営者としての自分。その両方をやりたい。それが、今の形につながっています。
編集後記
取材中、何度も同じ言葉が繰り返された。
「この子、なんでここで止まるんだろう」
それは問いであり、同時に、この人の思考そのもののように感じられた。
華やかな実績よりも、うまくいかなかった時間の話の方が印象に残る。
そして、その中で何度も出てきたのが、「支えられていた」という言葉だった。
最後にふと漏れた、「やっぱり現場が好きなんですよね」という一言が、このインタビューのすべてを表しているように思えた。
